2024/10/19
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土地や住宅の購入を検討しているとき、不動産広告で「セットバック」の文字を見かけたことはありませんか?
セットバックとは、「建物を前面道路から後退(セットバック)して建築すること」を意味する言葉です。
セットバックした部分は建物を建築できず、私道となることから「私道負担」と表記されることもあります。
「要セットバック」や「私道負担」と書かれている土地では、建物を建てるときに使用できる敷地面積が少なくなります。
すでに建っている建物を購入した場合も、建て替える際には土地境界線を道路から後退させなければなりません。
そのため、何も知らずに購入してしまうと、想定していた建物を建築できないという事態に陥りかねません。
一般的にはセットバックが必要な物件は購入を避けた方が無難ですが、メリットがある場合もあります。
ただし、いずれにしてもセットバックのデメリットやリスクなどの特徴をしっかり理解しておくことが重要です。
前面道路が道幅4m未満の場合、セットバックによって道幅を4m以上にする必要があります。では、なぜセットバックをする必要があるのか。
それは、主に防災上の理由によります。
実は、建築基準法では「接道義務」というものが定められています。
接道義務とは「建物を建てる場合、原則としてその土地が幅員4m以上の道路に、2m以上接していなければならない」というルールです。(建築基準法第43条)
接道義務は、火災などの災害時に消防車両の通行や避難経路の確保を円滑にするために、道路の幅を確保する目的で定められています。
しかし、建築基準法が施行された1950年以前からある古い市街地には、規定に満たない4m未満の道路も数多く存在しています。
そのような道路に面して建てられている住宅を、違反建築としてすべて取り壊すことはできません。
そこで、建築基準法第42条第2項では、以下の条件を満たす道路を、例外的に建築基準法上の道路として認めています。
♦幅が4m未満の道路であること
♦建築基準法が施行される以前より、その道路に建物が立ち並んでいたこと
♦特定行政庁(知事や市長)の指定を受けたこと
このような道路は、「2項道路」や「みなし道路」と呼ばれています。
セットバックとは、こうした2項道路に面した土地に建物を建てる(あるいは、すでに存在する建物を建て替える)際に、道路幅を4m以上確保するための制限のことです。
セットバック部分には建物を建築できず、私道となることから「私道負担」と呼ばれることもあります。(※ただし、厳密には「セットバック」と「私道負担」は同義語ではありません。)
幅員4m未満の道路に面した土地で建物を建てるには、道路幅を確保するために、土地の境界線をセットバック(後退)させる必要があります。
では、後退する幅はどのようにして決まるのでしょうか。
セットバックする幅の計算方法は、接している道路の反対側の土地の状況によって2つのケースに分けられます。
★道路の反対側が宅地の場合:道路の中心線から2mずつ境界線をセットバックする
道路を挟んで向かい合う土地が宅地の場合、両側の土地それぞれが道路の中心線から水平線で2mずつセットバックする必要があります。
例えば、幅員3mの道路の場合、両側の土地はそれぞれ道路の境界線線から50cmずつ境界線を下げることで、4mの道幅を確保するイメージです。
★道路の反対側が川、崖、線路などの場合:反対側の道路境界線から4m境界線をセットバックする
道路の向かい側が川、崖、線路などの場合は、反対側の境界線を下げることはできません。
したがって、川などがある側の道路境界線から水平線で4mの範囲内には、建物を建てることができません。
例えば、幅員3mの道路の反対側が川の場合、境界線を1m下げることで、4mの道幅を確保するイメージです。
セットバックは、もちろん拒否することができません。
セットバック部分には建物を建築できないため、セットバックが必要な土地や建物を購入する際には、注意が必要です。
セットバックが必要な物件は、防災上の観点でデメリットがあります。
そもそもセットバックが必要な理由である接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接する必要がある)は、災害時に救急車両が通行しやすいように定められた規定です。
要セットバックの物件が面しているのは幅員が狭い2項道路のため、防災性は低いといえます。
万が一、火災等が発生した時に緊急車両が通れないようなリスクを踏まえると、2項道路に面する要セットバックの中古物件を購入するのは避けることをおすすめします。
すぐに建て替える予定で購入するなら問題ありませんが、購入後もセットバックをしないまま放置するのはリスクが高いでしょう。
また、道幅が狭いため、一般の車両も通行しづらくなります。
車での通行が難しいと、買い物などの生活に必要な外出にも支障が出る場合があるため、利便性が下がる可能性があります。
要セットバックの土地を購入した場合、セットバックするための費用が掛かる場合があります。
具体的には、必要なセットバック距離の測量費用や、道路の舗装費用などです。
土地に高低差がある場合や、セットバックが必要な部分に塀がある場合など、状況によって費用も変わってくるため、どのくらいの費用が掛かるかは事前に確認しておきましょう。
費用の目安としては、玄関ポーチ部分を取り壊して道路にする程度であれば数十万円~50万円程度で済むケースが多いようです。
ただし、門や塀、建物の一部まで壊さなければならない場合などは最大で500万円程度がかかるケースもあるようです。
また、その工事費用を誰が負担するのかも重要です。
セットバック工事では、基本的には所有者自身が費用を負担するケースが多いようです。
ただし、自治体によっては助成金制度などを設けているため、購入前に自治体や不動産会社に確認しておきましょう。
セットバックをした部分は道路となるため、その部分には建物を建てることができなくなります。
したがって、セットバックすると建物を建てられる「有効敷地面積」が狭くなることをしっかりと認識する必要があります。
敷地面積に対してどれだけの大きさの建物を建てられるかは、その土地(エリア)ごとに「建ぺい率」・「容積率」という指標によって制限が定められています。
セットバックを要する土地の場合、セットバックした部分の面積は、建ぺい率・容積率の計算の際の敷地面積から除外しなければなりません。
例として、幅員2mの2項道路(向かい側が宅地)に面している幅10m・奥行き10mの土地を考えます。
この土地は面積100㎡ですが、1mのセットバックが必要となるため、セットバック部分の面積は10㎡です。
したがって、セットバック後の有効な敷地面積は90㎡となります。
この土地の建ぺい率が60%、容積率が200%の場合、建築できる建物の建築面積は90×60%=54㎡以内、延べ床面積は90×200%=180㎡以内に制限されます。
本来の土地面積の100㎡ではなくセットバック部分を除く90㎡で計算するため、建築可能な建物の大きさの上限値も低くなります。
物件購入前にこのことを必ず事前に確認しておきましょう。
セットバックをした場合、その部分の所有権は失わないものの「道路」としてみなされるため、利用上の制限を受けることになります。
セットバック部分には建物を建てられないだけでなく、門や塀を設置したり、物置や駐車スペースとして利用したりすることも認められませんので、注意が必要です。
要セットバックの物件は、売却しにくい可能性が高くなります。
特に、建て替えの際にセットバックが必要な物件を購入する場合は要注意です。
そのような物件は、建て替える際に従前の土地面積より小さい面積しか利用できないため使い勝手が悪く、セットバック不要の物件と比べると、敬遠されがちです。
売却できた場合も、価格は相場よりも基本的に安くなります。
なぜなら、セットバック部分は有効活用できないため、事実上価値がないとみなされるからです。
要セットバックの土地や建物を購入する際は、通常よりも売却リスクが高いことを認識しなければなりません。
セットバック付きの物件には購入前に注意すべき点が多くありますが、場合によってはメリットもあります。
セットバックした土地は道路となり、私的に利用することができなくなってしまいます。(所有権はありますが、利用する権利を制限されます。)
そこで、セットバックした部分は、固定資産税や都市計画税が免除されます。
ただし、注意が必要なのは、何もしなくても課税が免除されるわけではない点です。
固定資産税等の免除を受けるためには、自治体の役所などで非課税の申請手続きをしなければなりません。
具体的な手順については、各自治体の建築指導課などに問い合わせて確認しましょう。
セットバックした土地は私有地となりますが、自治体によっては買い取ったり、寄付として受け付けていたりする場合があります。
寄付として受け付けている場合も、助成金が出るケースもあるようです。
こちらも、各自治体の建築指導課などに確認しましょう。
土地から購入する場合、セットバック面積および建ぺい率・容積率の計算をきちんとした上で、建築計画を立てましょう。
ぜひ、マイホーム購入にお役立てていただければ幸いです。
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