2024/10/19
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瑕疵担保責任は耳にしたことがあるけど、契約不適合責任とはどう違うのか?
このような疑問を抱いている方もおられるのはないでしょうか?
2020年(令和2年)4月1日から、民法改正により「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。
名称だけでなく内容も変更されているため、特に不動産の売主側になる場合はきちんと理解しておくことが大切です。
ここでは、不動産売買取引における契約不適合責任とはどのようなものなのか、瑕疵担保責任とはどう違うのかについて詳しく説明します。
2020年(令和2年)4月1日から、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。瑕疵担保責任が、契約不適合責任に変わったのには、いくつかの理由があります。
そもそも「瑕疵(かし)」という言葉は読み方も難しく一般的な言葉ではないため、わかりやすくしようというのが一つ目の理由です。
また、瑕疵担保責任においては、責任を問う瑕疵が「隠れた」、つまり買主が気がつかなかったものに限られていましたが、その条件を見直そうというのが二つ目の理由です。
瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わったことで、売主の責任は重くなり、買主は中古住宅を購入しやすくなりました。
不動産における瑕疵担保責任とは、売買する不動産に「隠れた瑕疵」いわゆる『欠陥』があったときに、売主が買主に対して負う責任のことです。
隠れた瑕疵とは、買主が購入時に注意を払っていたとしても見つけられなかった「隠れた欠陥や不具合」のことを指します。
たとえば、購入前は気がつかなかったけれども、入居してみたら床下にシロアリ被害にあった、大雨が降ったら雨漏りがするなどが、隠れた瑕疵にあたります。
瑕疵担保責任では、隠れた瑕疵が発見されたときには、知ったときから1年以内に権利を行使する必要があり、「損害賠償責任」もしくは「契約の解除」を求めることができました。
しかし、瑕疵担保責任を問うためには、「隠れた瑕疵」だったことを証明する必要があります。
その欠陥の存在を知らなかったと証明することは難しく、瑕疵担保責任は、実際には運用しづらいことが問題とされていました。
契約不適合とは、「引き渡された目的物が、種類、品質、または数量に関して契約の内容に適合しない」ことを意味します。
契約不適合責任では、客観的に瑕疵といえるかどうかや、その瑕疵が隠れていたかのかどうかは関係なく「契約内容に合ったものかどうか」がポイント!
例えば、入居してから雨漏りに気づいた場合、それが「隠れた瑕疵」であったことではなく「契約内容とは違っていた」ことが問題になります。
また、瑕疵担保責任では、知ったときから1年以内に損害賠償請求や契約解除をする必要がありましたが、契約不適合責任では、契約の不適合を知ってから1年以内に売主へ通知すれば、権利が守られると改正されたのです。
これらの点から、瑕疵担保責任よりも契約不適合責任のほうが、買主の権利がより手厚く守られるようになったと言えます。
契約不適合責任では、買主は以下の5つの権利を請求できます。
追完請求とは、あらためて「契約通りの完全な目的物」の引き渡しを求められる権利です。(民法第562条)
不動産においては、購入後契約書に記載のなかった問題が発覚した場合には、修繕を求めることが可能です。追完請求は、売主の帰責事由は不要です。
帰責事由とは、「売主の責めに帰すべき事由」つまり「売主の故意または過失」のこと。
たとえば、入居後、雨漏りに気づいたときには、売主に雨漏り修理を要求できます。
当たり前のように感じますが、瑕疵担保責任では、まず雨漏りがあることを本当に知らなかったことを証明する必要があり、それは簡単なことではありませんでした。
しかし契約不適合責任では、「雨漏りがある」と契約書に記載していなければ、雨漏りのない家を購入したことになります。
購入後に雨漏りが発覚した場合には、たとえ雨漏りしていることを売主が知らなかったとしても、修理を求めることが可能です。
代金減額請求は、買主が売主に対して追完請求をしたにもかかわらず、十分な対応をしてもらえない、あるいは補修できないような問題であるときに減額を求められる権利です。(民法第563条)追完請求と同様に、売主の帰責事由は不要。
代金減額請求をするためには、買主はまずは売主に対して追完請求をする必要があります。雨漏りがするからといって、いきなり代金減額を求めることはできません。
どう考えても補修できないと認められるものについては、修理を依頼することなく、代金の減額請求が可能です。
代金減額請求は、直せるものは催告(相手に一定の行為を行うように要求すること)が必要ですが、直せないものは催告不要です。
契約解除については「催告解除」と「無催告解除」の2通りがあります。
契約不適合責任では、売主が追完請求に応じない場合には、買主が催告して解除できる権利、つまり契約を解除する権利があります。(民法第541条)
購入した不動産に契約書には記載のない問題があるにもかかわらず、売主が修理を行わないときには、「修理をしないなら契約を解除します」と言えるのです。
契約を解除されると、売主は受け取った代金を買主に返さなければなりません。
催告解除も、売主に帰責事由がなくても行使できます。ただし、契約に適合していない部分が、社会通念上軽微なものと判断された場合には、契約解除はできません。
代金減額請求と同様に、契約解除にも「無催告解除」が認められています。
契約不適合で、以下のように明らかに契約の目的を達することができない場合に、売主に対して催告することなく契約を解除できます。(民法第542条)
無催告解除についても、売主に帰責事由がなくても行使できますが、契約不適合の部分がささいなものであるなら契約解除はできません。
契約不適合責任では、買主は売主に対して損害賠償を請求する権利も認められています。(民法第415条)
ただし損害賠償を請求できるのは、売主に帰責事由があるときのみに限られます。
例えば、地震(天災)で家が損壊し、引渡しが不可能に場合には、売主の故意でも過失でもないので損害賠償は請求できません。
また損害賠償の範囲については、「信頼利益」以外に「履行利益」も含まれるようになりました。
信頼利益:契約が有効であると信じたことで生じた損害
履行利益:契約が成立していれば得られたと考えられる利益
信頼利益は、契約を結ぶためにかかったような費用を指し、履行利益は不動産投資をすることで期待していた売却益のような費用が該当します。
売主にとっては、損害賠償の対象となる範囲は格段に広くなったといえるでしょう。
また、瑕疵担保責任では、瑕疵を知ったときから1年以内に損害賠償を「請求」する必要がありましたが、契約不適合責任では「通知」すればいいとされています。
項目 | 瑕疵担保責任 | 契約不適合責任 | |
法的性質 | 法定責任 | 債務不履行責任 | |
責任を問える要件 | 隠れた瑕疵があるとき | 契約内容に適合しないとき | |
適用範囲 | 契約締結時までに生じた瑕疵 | 契約履行時までに生じた契約不適合部分 | |
買主が請求できる権利 | ・契約解除 ・損害賠償請求 |
・追完請求 ・代金減額請求 ・催告解除 ・無催告解除 ・損害賠賠償 |
|
損害賠償責任 | 過失 | 無過失責任 | 過失責任 |
損害の範囲 | 信頼利益 | 信頼利益 履行利益 |
|
期間請求 | 瑕疵に気づいて1年以内に行使 | 契約不適合に気づいて1年以内に通知 |
瑕疵担保責任では、不動産売買は「法定責任」とされ、「売買の対象となった物件」を引き渡すことが売主の責任で、「瑕疵のない物件」を引き渡す義務は負わないとされていました。
しかしそれでは瑕疵があった場合、買主が不利益を被ります。そのため瑕疵担保責任で、買主を守っていました。
対して契約不適合責任の法定責任は、債務不履行責任であるとされています。(民法562条)
これにより、売主の責任は、「契約内容に合致した物件」を引き渡すことと改められたのです。
瑕疵担保責任では、売主に責任を問えるのは「隠れた瑕疵(買主が注意を払っても気がつかなかった欠陥)」とされていました。
契約不適合責任では、欠陥が隠れていたかどうかは関係なく、「契約書通りの物件かどうか」が問題にされます。
瑕疵担保責任は法定責任であったため、売主は契約を締結するまでの瑕疵にしか責任を負いませんでした。
契約を締結してから、実際に物件を引き渡すまでに問題が生じても、売主の責任は問われませんでした。
契約不適合責任では債務不履行責任となったため、実際に契約を履行する物件の引き渡しまでに契約と合致しない問題が生じたときにも、売主は責任を負うことになりました。
瑕疵担保責任では、買主は契約解除か賠償責任請求しか権利がありませんでしたが、契約不適合責任では追完請求や代金減額請求が認められます。
瑕疵担保責任では、売主は故意でも過失でもなかった(無過失であった)としても、損害賠償に応じる必要がありました。
契約不適合責任においては、損害賠償に応じるのは、故意・もしくは過失があった場合のみです。
損害の範囲は、瑕疵担保責任では信頼利益のみですが、契約不適合責任では履行利益も追加されます。
瑕疵担保責任の追求は、瑕疵に気づいて1年以内に行うとされており、損害請求については期間内に実際に請求まで行う必要がありました。
契約不適合責任では、契約に適合していない旨を1年以内に通告すれば、瑕疵の内容を具体的に特定したり損害賠償であれば損害額の根拠を明らかにしたりする必要はないとされています。
瑕疵担保責任と契約不適合責任は「免責特約が有効である」ことは共通しています。これは瑕疵担保責任も契約不適合責任も、民法において任意規定とされているためです。
任意規定とは、契約者当事者の合意によって適用しないことができるような規定のことです。
旧民法においては、売主と買主の合意のもと、瑕疵担保責任の一部、もしくは全部を免責することができました。
契約不適合責任においても、同様に一部や全部を免責することは可能です。
瑕疵担保責任においては、築年数が古い家を売却するときには、売主の瑕疵担保責任を免責とする特約が結ばれることが多くありましたが、契約不適合責任でも、同様の特約を締結することが可能です。
上記は主に中古住宅を対象としています。
一方、新築住宅はこれまで、評価方法や表示のルールが明確ではなく、相互比較する方法もない状態が長く続いていました。
完成後の品質に対するクレームへの対応も曖昧で、解決まで長く時間がかかっていました。瑕疵担保責任の保証期間についても販売会社によってまちまちで、期間も1~2年と短期の保証しかしないケースもありました。
そうした状況を打破するため、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)が2000年に施行されました。
新築住宅には最強といえるメリットがあります。
それは「品確法(「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略称)」によって10年間の瑕疵担保責任が保証されている、ということです。
つまり、新築住宅はたとえ欠陥があったとしても「10年安心」ということで、これは中古住宅にはない強み。
新築住宅の場合は、経年劣化が無い分、中古物件よりも、契約不適合が起こる可能性は低いかもしれません。
しかし、物件が完成するまでは事前にチェックができませんし、完成後のチェックは基本的に施工主が実施するわけですから、実際に不具合があるかどうかは住んでみないとわからないともいえます。そうした意味では中古住宅よりなんらかの不適合があるリスクは高いといえるかもしれません。
しかし、新築住宅の場合は、品確法により、10年間の瑕疵担保責任を売主が保証されているので、安心をサポートする仕組みは、中古住宅よりも充実していると言えます。
新規住宅の取得契約(請負・売買)において、基本構造部分(柱、梁など住宅の構造耐力上主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分等)の瑕疵担保責任(修補請求権等)を10年間義務付ける、基本構造部分以外も含めた瑕疵担保責任の20年までの伸長も可能とする―と規定しています。
2020年の民法の改正によって、各種の法令は「瑕疵」という用語を「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない」という用語に改正しています。
品確法には「瑕疵」という用語が残されていますが、契約不適合と同義と考えてよいでしょう。
新築住宅の売主は10年間瑕疵担保責任を保証しなければなりません。
しかし、売主の住宅建売会社の経営状況が悪くて支払い能力がなかったり破産していたりする場合は、建て直しや補修ができませんでした。
実際、2005年に起きた「構造計算書偽装事件」は、発覚時に販売業者が倒産していたため、買主の住民が補修工事費用を自分たちで負担する羽目となりました。
そこで2008年4月に「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(住宅瑕疵担保法)が制定され、新築住宅の販売会社は、10年間の瑕疵担保責任を果たすために必要な資力を「供託金を積む」もしくは「保険に加入する」ことで担保することが義務付けられました。これで、完全に「10年安心」が実現しました。
一方、中古住宅には、品確法のような売主の保証期間の義務規定はありません。
上記の観点から、新築を選ぶのか中古住宅を選ぶのかによって買主が守られる内容が変わってきます。
一生に一度の買い物と言われているマイホーム購入。後悔のない選択をしていただきたいです。
注文住宅・規格住宅・リフォーム・リノベーションなど、家づくり・住まいに関することは徳島県阿波市市場町のプロジェクトホーム(敬工務店)にお任せください!
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